介護士ナオミ  ②困難は自分への贈り物!

与えられた困難は、自分への贈り物!

私の名前はナオミ、あれから2年が過ぎ21歳になった今、環境は随分と変わりました。

19歳で社会福祉士の国家試験は無事合格、自分でも言うのも恥しいけれど死に物狂いで頑張った甲斐があったと思っています。社会福祉士の国家資格を取った後は、資格手当、役職手当など他の手当ても足すと月5万円弱の給与も上がって、何とか我慢をしたらアルバイトもせずに家族が暮らせるようになりました。あの崩れそうで汚い借家を引っ越して、古い公団ですが二間ある2DKのアパートに今年初めに入ることが出来ました。ようやく人並みの生活がおくれています。

家族の現況は、下の妹は中学生になり家事や小学生1年生になった弟をみてくれて、ずいぶん助かります。母の病状はあまり改善せず、相変わらず寝たり起きたりの生活で何もできずにいます。妹は物心ついた時から地獄のような最低の生活環境で育ったせいか、なかなか強い性格で私に愚痴をこぼしません、今は妹が家の事を全て行い母親のような存在です。私が過去に家庭環境での苦しさから逃げようとして、中学の一時期グレたようにならぬようにと思うばかりです。

私がグレていた時期によく口にしたのは、宇多田ヒカルの母親藤圭子が歌う“夢は夜ひらく”の歌詞です。

「十五、十六、十七と私の人生暗かった、」

「過去はどんなに暗くとも夢は夜ひらく、、、」です。

これは、夜遅く酒に酔った母を迎えに行ったスナックでお客が歌っていたのを何度か聞いて、自分の置かれた現状が重ね合って同世代の誰も知らない歌詞を一人で口ずさんだのを覚えています。

私の今は、歌詞の夢は夜ひらくではなく、昼に自分の夢を叶えることが出来たことに幸せを感じています。

 

私の仕事は順調です。最近は責任も持たされる様になり、新しく入ってきた後輩が仕事で悩んでいる様子なので、お昼を少し遅くしてその後輩と昼食を一緒にすることにしました。施設の食堂の片隅に席を取りましたが、昼食の時間を遅くずらしたおかげで人は少なく、他の人に聞かれることがないのか、彼女のありのままの話を聞くことが出来ました。

後輩の彼女は私と同じように福祉系高校を卒業し、今年施設には入ったばかりの新人です。

性格は真面目で一生懸命に仕事に打ち込んでいる姿を見ていました。私から見るとお嬢さん育ちの一人っ子で、彼女には仕事の面で少し不安は持っていたのですが、、、

私たちの介護福祉士の仕事の基本は、1、身体介護、2、生活援助、3、相談・助言、4、社会活動援助ですが、学校教育で習うことが出来るのは2の生活援助から4の社会活動援助で、1の身体介護(食事介助、衣服の着脱補助、入浴剤補助、排泄補助、身体の衛生管理)は実際に体験しなければ本当に自分が理解出来ないことがあります。

特に排泄介助、おむつの交換は陰部付近を清潔に保つための作業が必要です。その為これら1の身体介護業務は介護福祉士になってからの仕事となります。この施設では介護助士に実際の訓練の一環としてやらしてみる事もあるのですが、見た限りでは彼女は出来る状態には有りませんでした。

彼女は子供のころから人を助ける仕事がしたいとの思いで、最初は看護士になりたかった様で,しかしそこまでの自信が無く介護福祉士を目指したという事でした。私から見ても潔癖な彼女が「どうしても男性の排泄の介助やおむつの交換が私には出来ない」と泣きながら訴えて言うのです。他の仲間が出来て自分に出来ないことへの口惜しさ、無力、悲しさが見られます。そしてこの仕事を自分の一生の仕事として、続けて行きたいとの思いの深さも、はっきりと読み取れました。

私は幼い時から、妹のおしめを換え、母の排泄の世話もし、異性経験もあったので、彼女の様なその事への困難さと苦しみを同じ重みで感じ取ることはできません。だけど誠実で真面目な彼女が社会福祉士を目指す解決の手助けの一端になれば、との思いで話す事としました。

 

『貴女も私も赤ん坊の時は有ったわね、貴女のお母さんは貴女のおしめを毎日変えたでしょう、赤ん坊でも臭くて汚かったと思うわ、貴女が風邪をひいて鼻が詰まれば懸命になって息の出来ない貴女の詰まった鼻汁さえも口で吸って助けたと思うの、自分の大切なものに対する大きな愛がそうさせると思うわ、肉親だから出来て他人だから出来ないではないと思うの、みんな弱い人たちに対しての優しさ、愛情をもって行えば出来ると思うわ。

貴女は私から見ると、純粋で真っ直ぐな愛情を持っている方よ、その気持ちを間違わずに患者さんに向ける事が出来る誰にも負けない能力が貴女にはあるわ、貴女はこの修練を乗り越えられると私は強く思い願っているわ。そして乗り越えれば、貴女はきっと素晴らしい社会福祉士になれると信じているのよ。』と話しました。彼女は真剣に聞いてくれて、何か決意を感じられました。

その後、彼女を遠くから見ていましたが、やはり苦しそうで歯を食いしばって頑張っている様子です、2カ月が過ぎた頃、私が施設の休憩所で休んでいる時、彼女が私の座っている椅子の横にコーヒーを2つ持ってきて一つを私に差し出し、「有り難うございました、やっと昨日から無理な気持ちを作らずに排泄の補助が出来ました」と何かを吹っ切れた笑顔で話してくれました。

私も「有り難う、これからも貴女と一緒に仕事が出来ることが楽しみです」と答えました。

何かが彼女の中でかたい殻を溶かしてくれた事と思います。それが何かは分かりません。

 

 

ただ言える事は、彼女の人生の中で貴重な贈り物を授かったことは間違いないと思っています。

 

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